ガチャリ、と。


扉が開く音が聞こえた。



その瞬間、あたしは反射的に布団を深く被って頭を隠してしまった。




足音が聞こえる。


あたしのような下品な足音なんかじゃなくて、トントンと微かに聞こえる上品な足音。



誰か、なんて確かめる勇気なんてなかった。



逢いたいと願うけれど、迅に逢ったらどうすればいいのか分からない。


あたしは静かに息を殺しながら、お母さんや海さんであってほしいと思ってしまった。




逢いたいけれど、逢う勇気がないんだ。


本当は勇気なんてあるのかもしれないけれど、怖いんだ。



だって、拒否されたらどうすればいい?



お願い。

お願い。



迅であってほしい。


迅であってほしくない。



逢いたい。



そう、逢いたい。