どこにも行かないで。


お願い。ずっとずっと傍に―――…





「ん…」



唇の隙間から漏れる声。


同時にゆっくりと薄く目を開くと、



「平気? 起きた?」



心配そうな顔をした迅があたしの顔を覗き込んでいた。



「じ…迅っ!」



気づけば自らが抱きついていた。


首に手を回し、ギュッと抱きついている。



いつもと変わらない日常のはずなのに、何だか変な夢でも見ていたのか、迅が傍にいることがすごいことのように思えてしまった。



だからなのかもしれない。


存在を確かめるように、迅にしがみつくように抱きついてしまった。