そんなあたしに、深谷は少し寂しそうで消えそうなくらい小さな声で、
「…ありがとうはこっちのセリフだ」
そう言ったのを、あたしは聞こえていないフリをした。
何も言わずに黙々と手だけを動かした。
涙が出る気配はない。
けれど目元が熱い。
この感情は何なのか。
この、あたしには分かりそうにない謎の感情は何なのか。
永久に分かりそうにないこの気持ちに蓋をするように、あたしは何かを我慢したかのように気持ちを抑え込んだ。
〝ありがとう〟
あたしはそう言ったけど、同時に〝ごめん〟も言えばよかったって今更ながらに思ったりした。
〝ありがとう〟〝ごめん〟
温度差が激しいその言葉の裏には何が隠れているのか。
この曇った気持ちを誰か―――消して。
―――ガチャガチャッ!
突然の音にビクリと体を震わせる。
それは深谷も一緒だったようで、同時にその音のする方へ視線を向けた。

