ムスッとするあたしの頭を撫でる迅の手は温かくて心地良い。
迅は再度、同じようなことを言ってきた。
「俺は櫻井グループの息子だよ」
「…うん?」
当たり前のことを言われ、あたしはハテナマークを頭上に浮かべる。
迅が何を言いたいのか分からない。
「瑠璃にとって俺はなに?」
「…え?」
「旦那? それとも櫻井グループの息子?」
「………」
あたしはそこでハッとした。
分かってしまった。
多分迅は遠まわしに言ってる。
わざとあたしに気づかせようとしてこういうことを言ってくるんだと思う。
気づいてしまった。
あたしが〝櫻井グループの息子〟というワードを出したからあんな瞳をしたんだ。
気づかなかった。
気づけなかった…。

