佐藤さんの言葉でフッと心が軽くなる。
あたしは思った。
この人はお父さんみたいなニオイがするんだ、と。
お父さんみたいなオーラじゃない。
この人はきっと本当のお父さんなんだ。
俯いたまま独り言のように言葉を吐き出す。
「お父さん…」
「ん?」
「…でしょ?」
上目で見つめて呟くと、「当たり」っと言って切り終わってるイチゴをあたしの口の中に入れた。
ちょっと酸っぱくて、でも甘い。
人生って、きっとそんなもの。
大きく深呼吸をして空気を吸い込んだ。
もう平気。
きっと平気。
あたしが泣き止んだのを確認すると、
「ほら、再開すんぞ」
そう言って再び包丁を片手に持った。

