あれ…?
何も訊かれなかった。
何も疑われなかった。
普通に考えてあんな場所にあたしがいたらオカシイって思うはずなのに、佐藤さんは何も訊かずにあたしに「ついて来な」と言った。
ついて来な…?
どうしようかと悩んだけれど、ここは佐藤さんについて行くしかない。
こんな広い家の中で迷子になるのはゴメンだ。
あたしは慌てて佐藤さんの後を追いかけた。
「…何か作るんですか?」
よく見れば、佐藤さんはたくさんの果物が入っているバスケットを抱えていた。
あたしはそれを見つめて尋ねた。
一先ずなぜあたしがここにいるのかを訊かれないために、何でもいいから話題を探す作戦に出た。
佐藤さんはあたしがついて来ていることを確認すると、
「あぁ。 店に新しく出すデザートでも考えようかとね」
そう言ってニカっと笑った。
そして言葉を続ける。

