あたしは気づいた。
このままバレないうちに逃げた方がいいんじゃないか…?
どう考えたって、あたしがここにいるのは相応しくない。
こんなコソコソと行動をして、高価な物でも盗みに来たのか? って疑われるかもしれない。
最悪英二さんの前に突き出されて、出て行けって怒鳴られるかもしれない。
逃げよう。
と思ったんだけど、佐藤さんは逃げようとしたあたしの頬を乱暴に片手でガシっと掴むと逃げられないようにし、暫しあたしの顔を見つめ思いついたように言った。
「瑠璃ちゃんか?!」
気づかれた。
あたしは頬を掴まれたまま、くぐもった声にならないように懸命に声を出す。
「こ…こんにちはー…」
あははー、なんてぜんぜん笑える状況じゃないのに笑い声も付けてみる。
「ビックリしたなぁ! 瑠璃ちゃんだったのかぁ!」
豪快に笑い声を上げる佐藤さんに、なおあたしは笑えていない笑い声を漏らす。
「あ…あたしもビックリしました…」
離してほしい。
頬が痛いんだ…。

