気づかないで。 このままでいたい。 ゆっくりと迅の背中に額をくっ付ける。 あたしに届く、迅の匂いがもどかしい。 気づいた気持ち。 迅のことが―――好きなのかもしれない。 気づいてしまった気持ち。 曖昧で形をなしていないけど、少なくともこの気持ちは〝知り合い〟レベルじゃない。 多分〝家族〟レベルでもない。 でもいい。 今は〝偽〟という関係でいい。 今は―――それだけで。 それだけでいい。