「理事長の息子と皆川、ただの知り合いなんかじゃないだろ?」
そう訊かれた瞬間、息が止まった。
あたしは腕を掴まれたまま浅い呼吸を繰り返す。
な…なんで…。
あたしは黙ったまま深谷を見つめる。
血の気が引いていくのが分かる。
ドクドクと血が逆流したような、不快感が襲ってくる。
「な…なんで…?」
黙っていたら認めることになると思ったから、搾り出すように声を出す。
「校庭から見えた。 あの息子さんが皆川を見つめる表情…あれは知り合いなんかのレベルじゃない」
何それ…。
「おかしいと思ったんだ。 皆川があの人におんぶされて階段を下りたりしてたから…」
見られた。
誰もいないと思っていたのに―――見られてた。
ドクンドクンと心臓が騒ぎ出す。
やばいっと全細胞が危険信号を出す。

