―――ピルルルルルッ
突然どこからか鳴り出した音に、あたしはビクンっと飛び上がる。
薄暗いこの部屋に、この奇妙な音はあたしをビビらせる。
「な…なんだよ…」
泣きべそをかきそう。
心細くて、誰かの体温が恋しいと思ってしまう。
体を小さく丸めようと動いたとき、肩から何かが滑り落ちた。
「…?」
なんだろう。
そう思ったのと同時に音が止んだ。
あたしはゆっくりと立ち上がり、落ちた物を拾う。
「…あ、」
これのせいだったんだ…。
あたしの体にかけられていたものは迅の上着だった。
これのせいでずっと抱きしめられたままだと思い込んでいたようだ。
あたしはそれを胸の前まで持ってくると、反射的にギュッと抱きしめた。