〝さん〟もダメ〝くん〟もダメ、ときたら後は呼び捨てしかない。
そんなことは最初から分かっている。
分かっていても〝くん〟を付けたことにはちゃんと理由がある。
どうしようとか、もうそんな展開じゃない。
呼ばなくちゃ終わらないことはこの空間の空気から読み取れる。
それでもどうしよう、と考えてしまうのはあたしが慣れていないから。
名前を呼び捨てにすればいいだけのことなのに、ドキドキと心臓が騒がしいのはあたしがお子様だから。
「…瑠璃?」
まだ覚醒していないらしい。
あたしの名前を呼ぶ声が少し擦れてて、それが余計にドキドキを増加させる。
「…瑠璃」
近い距離に迅さんを感じる。
熱を持ってきた自分の体にすらドキドキする。
分かることは1つ。
迅さんはあたしを試してる。
理由は分からないけれど、あたしの様子を伺っているのは確かだ。

