今まで〝おしとやか〟とか〝大人しく〟〝丁寧〟〝礼儀正しく〟などの言葉に一切関わりのなかったあたしが、いきなりこういうことを考えろってなっても無理だ。



でも気づいた。



元の家とは違い、玄関とリビングが繋がってるわけじゃないんだってことに。


だからここで何を言おうと誰の耳にも聞こえない。



「…そっか」



家が広い、というのは案外寂しいということを知った。



けれどそんなことをグダグダ言っているわけにはいかない。


あたしは靴を脱ぐと置いてあったストライプのスリッパを履いて、早足でリビングへと向かった。



リビングに繋がるドアを開ける。


同時に聞こえた声。



「おう瑠璃ー! おかえりー!」



「おかえりなさい」



大きなソファに腰掛けていたお母さんと社長―――って呼び続けるのは何だか微妙だから、英二さんと呼ばせてもらおう。