迅さんは突然あたしに言ってきた。
「ギュッてして」
そのあまりにも色っぽいその声に、あたしの心臓はドキドキと加速しだす。
「…え?」
「俺の背中だけ寂しい」
そう言って、迅さんはあたしの背中を上下に撫で始める。
「………っ」
あたしは思ってしまった。
考えてることがアホっぽいかもしれないけど思ってしまった。
出会ってから今まで、そんな時間がなかったからのせいかもしれないけど、まさか迅さんみたいな完璧で塗り固められている人がこんなことを言うなんて思ってもみなかった。
だからかもしれない。
そのギャップのせいかもしれない。
〝可愛い〟思わずそう思ってしまった。

