蹴り飛ばしてやろうと思ったのだけど、迅さんの足によって阻止されているようで動けなかった。
攻撃は無理だと思ったあたしは、両腕を顔の前でクロスさせて防御してみることにする。
一体それに何の意味があるのかは分からないけれど、咄嗟の判断で身を守ることしか浮かばなかった。
あたしのその行動に、迅さんは面白おかしくブハっと噴出すと、
「そんなに警戒すんなってば」
そう言って、あたしの背中に腕を回してきた。
そのまま引き付けられるように少し持ち上げられる。
同時に少し体が起き上がって、顔の前にあった両腕が胸の前へと戻る。
あたしはキツク目を瞑った。
―――ぎゅ
「…へ?」
思わず情けない声が鼻から抜ける。
同時にパっと目を開き、瞬きを繰り返す。
何もされなかった。
ただ抱きしめられているだけだった。

