けれどそんなことは今はどうでもいい。
先生の声なんていまいち頭に入ってこない。
それよりも背中にある迅さんの手が気になってしょうがない。
迅さんの手はふっとたまに触れたりススっと下に下がったりを繰り返す。
ゾゾっと背筋に悪寒のようなものが走る。
気持ち悪いというよりはくすぐったい。
くすぐっているようにしか思えないその手から逃げるように、あたしは少し体を左に移す。
けれど意味なし。
何度も何度も顔を上げ、迅さんを見つめる。
けれど迅さんはちっともあたしを見てくれない。
この手は何だよッ!!
そう怒鳴って振り払えればいいのに、生憎あたしにそんな勇気はない。
仮にも夫。
あたし達ド貧乏親子を養ってくれると言ってくれた心優しき人。
現在助けてもらってる進行形。
…それなりに敬意を払うよ、あたしだって。

