あぁ…あたしはやっぱりどこかに連れて行かれて売られるか食べられる…。


そんな妄想―――――もとい被害妄想をしてしまうのはしょうがないことだと思う。



だってよく考えてみればコイツ誰だよ。


櫻井グループの息子ってことしか分かってねぇよ。



危険すぎる。


本当にピンチなのかもしれない。



あたしの視線はチラっとソイツに移る。



コイツを殴って気絶させて、この車を乗っ取るなんてことはできないだろうか。



なんてことを考えた。



不意をつけばできないことでもなさそうだ。


昨日お母さんに手を出すなと言われたばかりだけど、これは話が別だ。



あたしの命――――――――体を守るためだ。



売られるわけにはいかない。


食べられるわけにもいかない。



女、皆川瑠璃。


ここでやらなきゃやられちまう。