プラトニック・ラブ





どうしてこんなに車が広いんだろう。



少し近くなっていた距離がすごく離れる。


その距離は警戒するあたしへの対処のようだった。



…やっぱり大人だ。



この人は同学年の男子なんかとぜんぜん違う。


櫻井グループの息子だからいろいろやってきたせいなのかもしれないけど、凄いスマートな対応だと思った。



〝女性〟の扱い方を分かっていらっしゃるよう。



あたしの方を向かないソイツ。


あたしは少し顔を傾けてソイツを見つめながら小さく声を出す。



「何も…しないの…?」



「あぁ」



ソイツはドアに体を預けるようにして、外の風景を眺めたまま頷く。



「本当に何もしないの…?」



あたしが恐る恐るそう訊いたときだった。



ソイツは顔だけをあたしに向け、そしてさっきのように口元に怪しげな笑みを貼り付けたまま言った。