ここから飛び出してもいいだろうか。
恥ずかしくて今すぐにでもここから逃げ出したいけどそれができない。
あたしは体を小さくさせて流れ行く風景を再び眺めることしかできなかった。
なかったことにしたい。
――――ぽんぽん
不意に頭を撫でられた。
あたしは驚いて振り返る。
ソイツは見たことのない優しい笑顔を浮かべ、あたしの頭に手を伸ばしていた。
その表情に、ドキリと胸が鳴る。
「安心しろ。 取って食ったりしない」
「………」
あたしは何も言えず、ただ恥ずかしくて溢れ出てきた涙を拭った。
どうしてだろう。
100パーセント信じることなんてできないのに、何故か心が和らぎ安心できた。
ソイツはあたしの頭から手を離すと、再び窓側―――あたしから一番遠い窓側へと座りなおした。

