「…お…美味しくないよ…?」
「…はぁ?」
恐る恐る言葉にしてみたものの、全く理解できないという顔をしたまま不思議そうにあたしを見つめているソイツ。
本当に分からないらしい。
本当に分かってくれないらしい。
トップの櫻井グループの息子は馬鹿なのかもしれない。
もしくは鈍感。
…駄目男だまったく。
だから言うしかない。
このまま無抵抗でどこかへ連れて行かれるのなんてゴメンだ。
「…た、たたっ食べ…ないで…?」
小さく呟いたこの声は、情けないくらい震えていた。
あたしがこの言葉を言い終わった瞬間、車内は「…は?」というかなり気まずい空気に包まれる。
同時だった。
車内は爆発的な笑いに包まれた。

