プラトニック・ラブ




コイツはトップの櫻井グループの息子だからあたしを連れまわしたりする馬鹿なことはしないだろうけど、昨日初めて目にした奴を100パーセント信じることなんてできない。



もしかすると、あたしはこのままどこかに売りつけられるかもしれない。


もしくは、食べられてポイ捨てされるかもしれない。



…あたしは食べても美味しくないよッ?!



あたしはギュリンっと勢いよく振り返ると、ソイツと向き合って言葉にできない思いをジェスチャーで表す。



〝あたしを売る気?!〟


そんなことを普通に訊けるわけがない。



少なくともあたしは〝女性〟。


言葉くらい選んで喋る。



何が言いたいのか、何を伝えたいのか全く分からないといった顔であたしを見つめるその目は〝…は?〟って言っている。



それでもあたしは、この言葉にできない不安をジェスチャーで表すことしかできない。



分かれよ。


少しくらい知らない車に押し込まれた〝女性〟の気持ちを考えてくれよ。



全く分かってくれない。


どう頑張っても分かってくれる気配がない。



だから言うしかなかった。