もう戻れなくなってしまった。
もう何も感じなくなってしまった。
だから。
もう諦める。
なにもかも。
消えてしまえばいい。
なくなってしまえばいい。
濡れた髪や服から滴が落ちる。
ポタポタと様々な斑状模様を作り出していく。
でも、誰も気づかない。
こんな僅かな跡でさえ雨が止めば消えてしまうのだから儚い。
世界はそうできている。
人間はそうできている。
だから、もうやめると決めた。
いつか、翼が欲しいと思ったことが何度かある。
真っ白で、とても綺麗な翼が欲しいと本気で思ったことがある。
無理なことを分かりきっていて、あたしは必死になっていない神様に頼んだ。
もし背中に翼がはえたなら、やりたいことがいくつかあった。
けれど、それすらも忘れてしまうほど昔だったような気がする。

