最上階へと足を進める。
急ぐわけでもなく、ただいつものように。
ゆるやかに。
生きているように。
トントンと。
足音と共に、ただ上へ。
見えない明日はもう見えない。
見えない未来はもう見えない。
耳障りな軋む音。
靴底と鉄が生み出す不協和音。
いっそうこのまま倒壊してしまえばいいのに。
なんて、まだ当分無理なことは分かっている。
知っているのに、願って、祈って…。
バカみたいに信じていた時期があたしにもあったっけ。
どうでもいいけれど、つい思い出してしまった。
前に進む足は軽くも重くもない。
目指す場所があればいい。
人間はそんな生き物だ。
けれど、あたしはもう人間ではなくなってしまった。

