「どうしたのー?大丈夫?」
看護師は車椅子から手を離し、女の子の前に屈む。
よしよし。
女の子の頭を撫でながら、看護師は女の子を泣き止ませようと必死。
あたしはツーンとそっぽを向く。
看護師は何かを言いたそうな顔であたしを見た。
いや、睨んだと言った方が正しいかもしれない。
「………」
看護師の背中をじっと睨む。
こいつは…〝あっち側の人間〟だ。
あたしは1人でエレベーターへと向かうことにした。
こんな看護師ならいない方が断然マシ。
予想以上に腕力が必要とされる車椅子に、あたしは悪戦苦闘。
休み休み、休憩しながら必死でエレベーターへと向かった。
結局のところ。
あの看護師が追いかけて来ることはなかった。

