一瞬ズキンと矢を抜かれたように胸に痛みが走った。 だけど、すぐに止まった足を動き始めて、 「んーどうかな」 いつもの笑顔でそう言った。 知美の顔は見ずに。 すると知美がオレより少し前に小走りで行き、オレの目の前で立ち止まり、まっすぐ目を見て言ってきた。 「はぐらかさないでよ!」 人っ気のない廊下には十分すぎるほど響き渡った。 オレはにこっと微笑んで、知美の横を歩いた。 知美の目に溜まった涙に気付かないふりをして。