王子様のヒミツ

「あ、あのっ!あたし好きな人がいるんです。だから先輩とはお付き合いできません。ごめんなさい」

 真野先輩の表情が険しくなっていって、なんとなーく、ほんとになんとなーくだけど、冷気みたいなのを感じる・・・かも・・・?

「じゃあさ、」

 真野先輩があたしに向かって一言。

 諦めてくれたのかな?・・・なーんて、そんなことあるわけなくて・・・

「誰?好きな人って」

「へっ?」

 誰?誰って・・・だれー!?そんなことまで考えてないし!!

 でもここで答えなきゃ、真野先輩を振る理由がなくなっちゃうよね・・・?

 誰かいないかな・・・先輩が納得するような人・・・。あっ!アレだ!

「あ、あたしっ、高峯陸王くんが好きなんです!」

「は?マジで?」

 おっ!ちょっと信じてるかも!?

「だから、あの・・・ごめんなさい」

「高峯ってマジかよ~・・・」

 上手くセットされてる髪の毛をくしゃっと掴みながら、真野先輩は階段を下りていった。

 ・・・あたしスゴいかもっ!こんだけ演技力あるんなら女優とか目指しちゃおっかな??

 さーてとっ。あたしもそろそろ戻らなくちゃ。

 階段に一歩足を踏み出したとき、

「きゃあっ!!」

 いきなり誰かに腕を引っ張られた。

 腰に回された腕と、固い胸。それに・・・男物の甘い香水の香り。

 女の子が買い求めるのに必死なその香水をまとっているのは・・・