『あっ、違う、違う、忘れた俺が悪ぃんだもん。別にいいんだけどさ。』
気にするなというように涼しい顔して、コーヒーに手をつけた。
私も手紙を差し出し、運ばれてきた紅茶を口に運ぶ。
『でさ、なんていうかさ、お前には夏稀とのこと話しとこうかなって、電話でも言ったけど。』
『うん。』
私は一臣さんに悟られないように軽く唾を飲み込んだ。
『お前のおかげで、夏稀とのことは、俺の中でケリがつきそうな気がする。あっ……夏稀の中ではとっくに俺とのことは済んだことになってるんだけどさ。』
『……うん。』
済んだこと、か。
きっと二人の気持ちの整理みたいなものがきっと出来つつあるって意味なんだろうな。
『俺は彼女を憎んでた。なんで俺の前から姿をいきなり消したのか……理由もわからず、ただ憎んで、でも好きで、答えがないから堂々巡りで……。』



