甘い恋には遠すぎて



いつものファミレス


『ここ、ここ!!』


一臣さんが小さく手をあげていた。


私は少しはにかんだ笑顔を見せた。


笑顔といえば、出会った時の一臣さんは、全くといっていい程、感情が表に出ていなかった気がする。


でも今は少しだけ表情が豊かに感じられる。
知り合って間もないけれど、確実に私と一臣さんの距離は縮まっている気がする。


『手紙持ってきてくれた?』


私は自分のカバンに手を伸ばす。


指先に封筒の感触を確かめながら、この手紙を渡してしまったら、もう私と一臣さんを繋ぐものは何も失くなってしまう。


だからといって返さないわけにもいかない。


少し躊躇していると、


『あっ、もしかして中身読んだろ?』


思いがけないその一言で私は真っ赤になって俯いて小さく


『ごめんなさい……。』

と呟いた。