『悪者のまま、去ろうと思ってたんだけど、このままじゃ一臣も前に進めない。それに……私も。こんなこと頼んで申し訳ないけど。お願いします。』


深々と頭を下げる。


そして手紙は、くれぐれも私がいなくなってから渡してねと言い残し、去っていった。


夏稀さんの後ろ姿と残された封筒を見比べながら、私は一臣さんが好きでも振り向いてもらえないのに、夏稀さんはやり直すつもりはないのに、一臣さんの心を全部まだ独り占めしてる。


ちょっとだけ妬ましかった。