甘い恋には遠すぎて



裏口で夏稀を待っている時間がヤケに長く感じた。実際には20分もなかったはずだが。




−カチャリ……−




扉が開いて夏稀が姿を現した。




『なつ……き……。』


上手く発音出来ているだろうか。


『一臣……。』


聞きたかった夏稀の声。

昔とちっとも変わらない。


『ちょっと歩かない?』

俺はそう言うのが精一杯だった。



もしこの手を伸ばして夏稀に触れたら、二度と離したくなくなるような気がして……。



先に口を開いたのは夏稀だった。


『元気だった?』


『あぁ……夏稀は?』


『うん。まぁまぁ。』



そしてまた会話が途切れた。