甘い恋には遠すぎて



よしっ、救出成功!!


ちょっと自分に酔いしれる俺。カッコイイ♪






『兄ちゃん待ちなよ。』

背後からオヤジに声を掛けられた。



ま、ま、マズイ……。



俺は莉奈に先に走って逃げろと小声で言った。


莉奈は、切なそうな顔をして首を横に振る。


莉奈の背中を突き飛ばし、俺はオヤジと対峙する。


『なんか用?』



ビビッてるのを悟られてないだろうか……。


心臓がバクバクと口から飛び出しそうだ。



『彼女だからってハイそ〜ですかとは渡せないねぇ……これから楽しい事すんだからさ〜。』



ムカッ……バクバクしてた心臓が、一気に怒りに変わっていく。


『楽しいこと?おっさんの楽しいことってなんだよ!言ってみろよ!』



ここは、莉奈が逃げる時間を稼ご……ってあれ?


あれれ?


しりもちついたまま莉奈は、俺達の様子を見入ってしまっている。



−オイ、ばかっっ!行けって!−



小声で莉奈を促すが、莉奈は尻が地面にくっついてしまったかのように動かない。