甘い恋には遠すぎて



ただの偶然なんだろうか?同じような匂いなんて、沢山あるし。


運ばれたアメリカンを一口飲もうとカップを持ち上げた。



−夏稀さん、上がっていいよ−



マスターの声がした。




なつ……き



なつき!!?




一臣さんがあの日呟いた名前。




『はい、これ、マスターからだよ!』


麻由子がチーズケーキを2つ運んできた。


私は御礼もそこそこに、ナツキと呼ばれた女性から目を離さずに、


『ねぇ、麻由子!あの人に▲▲高校の一臣って知ってるか聞いて!!早く!』


麻由子は、慌ててまたカウンターへ戻り彼女に話しかける。


すぐに彼女の顔色が変わったのが見てとれた。


手に持っていたダスターが床に落ちた。




間違いない……あの時、砂浜を歩いていた女性なんだ。