コツコツというヒールの音がやけに廊下に響いて聞こえて、
「なぁ、さっきお前の部屋から一条が出てきたように見えたんだけど」
そんな会長の言葉にワンテンポ遅れて思考が追いつく。
え…ウソ…見られてたの!?
「お前ら仲良かったのか」
その視線が私を捉える事はなくて、スッと前を見たままそう話す会長の横顔を思わず見つめた。
なるべく怪しくないように…自然体で…そしていて動揺がバレないようにと口を開く。
「仲良くないですよ、風紀の女性控え室にお迎えに来たみたいでお隣と間違えただけです」
そう言ってニコリと笑って見せると、会長は何か一瞬考えるような顔を見せてから、すぐにいつものクールな表情へと戻し「へぇ」と
小さく呟く。
だ、大丈夫だよね…私の答え不自然じゃなかったよね。
ダンスパーティーへの緊張なのか、それとも会長に見られてしまったことへの緊張なのか…はたまたさきほどの湊君との出来事での緊張なのか…
手にはじんわりと汗が滲みそれを握りしめた。
「ダンス、五十嵐と練習してたんだろ」
湊君の話題から話がそれてホッと胸を撫で下ろす。
「はい、会長知ってたんですね」
「東堂に聞いた」
桜先輩?何故それを知ってるの!?
なんだか桜先輩には全てお見通しな気がしてくるのは気のせいだろうか…



