「間違えてねぇよ」
「え?」
間違えたわけじゃないというならば、生徒会の控え室にわざわざ来るなんて考えられなくて
「…じゃあどうしたの?」
湊君はコツンっと音の良い足音を立てると私の前へと立ち止まり
「お前が、緊張してるんじゃないかと思って」
あれから湊君の宣言通り、湊君が私に近づいてきたり触れて来る事は一度もなかった。
それと同時に、私と湊君の恋人ごっこと名の付く不思議な関係に変化もなくて…特に恋人っぽい事もしていない。
だから、目の前で少し首を傾げながらポケットへと手を突っ込む湊君の姿とその言葉に小さく胸がトクンと鳴る。
「き、緊張なんてしてないよ!もう完璧なんだから」
湊君から視線をずらすようにして右へと視線を向けた時
「強がりが。手 震えてる」
私の右手を優しく掴み、どこか楽しそうにクッとノドを鳴らした。



