「湊君は…いいの?」
私には色々聞いてくるくせに、湊君の本音を聞いた事はない。
もう決まった運命だからと諦めているのか、それとも仕方ない事だと受け入れているのか…
「言っただろ」
「…………」
「俺はお前が婚約者で良かったって」
甘美に微笑むその顔は
本当か嘘か分からない。
意地悪な湊君の事だから、私の反応を見て楽しむつもりなのかもしれない…でも、そうじゃないのかもしれない。
「もしこれで俺達が上手くいかなかったら、それはそれできっと親同士も婚約の事は考え直すかもしれないし」
「そっか…」
湊君のもっともな作戦にそう答えながらも。ただ、私は無意識に大きく鳴り続ける胸を押さえるのに精一杯で
「今日からよろしくな」
耳元で呟かれたその言葉に
コクンとゆっくり頷くしか出来なかった。



