「俺はお前で良かったと思ってる」
「え?」
「婚約者」
私の横髪を撫でるように触れ、そして小さく笑う。
「お前、俺を好きになれ」
ビー玉のように綺麗で色素の薄い瞳が私を見つめ、形の良い唇がゆっくりと動く。
まるでスローモーションかのように見える目の前の光景を、私はただ他人事のように見つめるしか出来なくて
「…っん」
そして私と湊君の影が重なった。
二度目のキスは、やけに私を冷静にさせ
そして互いの唇が馴染むように意識が戻ってくる。
少しして離れた湊君の唇をジッと見つめていると
「何だよ、物足りないか?」
意地悪そうにそう言われ、思わず顔がカッと熱くなる。
付き合ってもいない相手にキスをされて、嫌なはずなのに…1回目のキスの時とは違って嫌な感じなんかしなくて…
それはきっとさっき湊君が言ってくれた言葉が少なからず嬉しかったから…



