私は履いていた足袋をぽいぽいっと脱ぎ捨てると、鏡の横に置いてある趣味の悪いバラ柄の椅子に座る 「陸様。」 その私の背筋をゾゾゾゾっと凍らせるような筋の通った声 私はゆっくりと振り返って、やっぱりその笑顔に身体全体を凍らした。 「か…香月(カヅキ)」 スーツを綺麗に着こなしたその格好は完璧で 「陸様、もう出発の時間です。参りましょう」 爽やかすぎるその表情が逆にとてつもない圧力をかけて私を見てくる。