「待ってくれ、もっと調べないのか?」

「隅々まで調べたが、今の現状では解決へは程遠い。それに、今は時間が時間だ。睡眠をとらないと頭の働きが鈍って、真実にたどり着けない。だが、容疑者は絞られている」

「本当?」

「あの車掌と一等室の宿泊者だ。
僕はこの間の事件の記録をつけるのに徹夜していたから、ずっと起きていたんだ。その間、廊下を移動していたのは車掌だけだったし、それに一等車両は機関車のすぐ後ろ。僕たちのいた二等車両は一等車両のすぐ後ろだからだ」

「わかった。それじゃあ朝食の後に本格始動できるように用意しておこう」

「たのむよ」

「でも、ニューヨークに着くまでに解決してくれ。なにも手掛かりがないまま警察に委託されたとなると、会社としても社会的評価に傷が付くからな…」