「こら、やめなさい」
「あ、」
止める間もなく、
牛乳はカップの横を伝い、
彼の制服へと零れた。
……せめて、
テーブルの上でやってくれればいいのに。
「まったく。不器用なんだから、
そういう事はするなって
いつも言っているだろ?」
これが牛乳だったからまだいいけれど、
調理中に、揚げ物中に。
油を被ったりだとかを想像すると、ヒヤッとする。
まあ、彼がそんな事をする訳が無いのは
分かっているから想像するのもよそう。
「……セルフでぶっかけ……」
下品な事を呟いているが、
それを無視する。
「ほら、さっさとシャワー浴びてきなさい」
零し始めてから少し呆けていたため、
彼の服はびっしょびしょだ。
本当に、変な所でとろい子だ。
「何かそのセリフやらしいよ、先生」
「黙って行かないと晩御飯作らないけど」
そう返すと、大人しく風呂場に向かった。



