襟元のボタンを、上から1つ、2つ目まで辿った。

それを摘まんで糸を触ると、
予想よりも弱く留められているようで、
これなら鋏無しでもいけるだろうか。


勢い任せに引っ張ると、シャツの第2ボタンはあっさりと引きちぎれた。



少し隙間の空いた自分のシャツを見てから、彼は俺の手の中のボタンを無言で見つめた。


「……ホワイトデーの、お返しって事で、ね?」

少し早いけど、と笑って誤魔化せとばかりに彼の頭を撫でながら笑いかけた。


もしもこの後、写真を撮る予定とかあったらと考えると、ちょっと申し訳ない。

ボタンが無い、その事自体に問題は無くとも、冷やかされる可能性を考えると、彼は嫌がりそうだから。