スマイリー

「…お前さ、沙優ちゃんも確かに大事だけど、自分の面倒はちゃんと見てるのか?」



右手に持ったペンをくるくると器用に回しながら、あきらが尋ねた。



「E判定・西京大学への情熱はまだ冷めてないんだろう?」



「E判定って言うな。これ見たら少しはその口も大人しくなるだろうがな」



進はプリントを数枚ファイルから取り出し、あきらの顔の前に突き付けた。前日の国語、生物、現代社会。それから今日の1・2限にやった英語、3限にやった数学ⅠAのセンター対策の結果だ。



「おお…どれどれ。うん?おいおい、すごいじゃないか、進!」



あきらが叫んだ。無理もない。そこには、あきらの目にはなかなかに信じがたい数字が羅列されていた。



定期テストならば赤点確実だった生物はなんとか直視できる点数になったし、国語と英語は8割に迫る正答率。現代社会は7割を少し切る程度だが、問題集に掲載されていた平均点を5点ばかり上回っていた。



ここ1ヶ月弱。進は昔のように地味な努力を再開していた。テレビ禁止令を発令し、マンガは全て段ボールに封印した。



朝はいつも補習授業のために早起きしなくてはならないが、それでも夜中の1時30分までは眠い目をこすり、必死で机に向かった。



休み時間と通学時間は単語帳を駆使してなるべく無駄に過ごさなかったし、風呂でも防水素材の高級単語帳で、日本史の年号を黙々と覚えた。



マーク式は記述式と違い、勉強結果が比較的早く反映される。1ヶ月の勉強ですぐに点数につながるのは、マーク式ならではの現象だ。