スマイリー

「簡単なことだ。クラスの連中が、沙優ちゃんと少しでも接点を持つようにしてくれ」



「…先輩、本当にちゃんと考えてます?粗削りにも程がありますって」



確かに、進の用意していた作戦は粗削りも粗削り、大雑把もいいところだった。



進は、有華と沙優を出会わせることと、淳也か誰かを使って沙優をクラスの人気者にさせること、せいぜいそんなアウトライン程度しか頭に描いていなかったのだ。



「よくそんなふわふわした作戦でここまで乗り込んでこれましたね」



正樹は呆れの表情をあえて隠すこともしなかった。



頭をぐしゃぐしゃと掻いて、あぁ、何という先輩を持ってしまったんだろう、と、その苦笑した口が今にも動きだしそうだった。



「反論の余地もない」



作戦と呼べるような代物でないことは誰の目にも明らかだ。



でも、それでも。



「でも、何もやらないよりはずっといいだろう?」



「………」



正樹はもう一度、頭をぐしゃぐしゃと掻いた。もはや最初に進に話しかけたことから後悔している様子だ。



「…分かりましたよ。何とかしましょ」



ひきつった顔を無理やり笑顔にさせて、不幸な後輩はこの難題の請け負いを承諾してくれた。