スマイリー

「ほら、クラスの男共見てくださいよ」



そう言われてクラス内を見回してみると、なるほど男子の半数ちかくは弁当そっちのけで有華の方をちらちら眺めている。



「まるで芸能人だな」



「有名なのは確かですよ。あんなに可愛くて、頭も良いなんて反則じゃないですか」



すぐ目の前にいる有華にちょうど聞こえないくらいの大きさの声で、正樹が囁いた。



有華は沙優ともすっかり打ち解けて、まるでずっと前からの知り合いであるかのように笑い合っている。



「…そうだな」



不意に進は、自分がなぜ有華とこんなにも関わり合えているのか、不思議に思えてきた。



ちょっとしたきっかけで、進は有華に関わることになった。彼女のあの屈託のない笑顔に助けられ、有華は瞬く間に進の意識に深く入り込んできた。



有華の笑顔が進を支えているし、西京大学を目指す理由としても大きな割合を占めているのが実際のところだ。



進は、自分が普通の男子高校生であることには自信を持っている。



普通、というより、平凡と言った方が正しかろう。



あきらのように勉強ができるわけではないし、淳也のようにずば抜けて運動ができるというわけでもない。



そんな自分を、進は別に嫌いではなかったし、ある程度満足もしていた。



ただ、自分と有華とでは現実的なスキルの点から考えると、釣り合うべくもないことは明らかだ。



「進先輩、どうかしました？」



「あ、いや別に」



正樹の声で進は我に返った。自分でも気付かないうちに、進は有華の顔をぼうっと眺めていた。



有華は、美紅に誘われてこの企画に参加した。



進は、最初から有華を誘うつもりで、そのあとに有華と仲のよい美紅を誘おうと思っていた。順序は狂ったが、ほぼ計画通りだ。



沙優は、有華と楽しそうに会話しているし、周りの生徒たち、特に男子生徒がこちらを眺めているのはすぐに分かる。



今のところ、大体進の思う通りにコトは進んでいるようだった。