スマイリー

脳裏に浮かんだ有華の屈託のない笑顔が、またも進の思考回路を停止させた。



「それ、それはどういう―」



「だから、お前らも両想いだって」



心臓が早鐘を打っている。あきらに聞こえてしまうかと思うほどの激しい鼓動だ。



「昨日松本がプリント俺らに頼んだのもそのせいだよ。大崎の家に近い女子がいないとか、多分嘘だ。大崎と同じ中学の奴もクラスに何人かいるし」



もう勘が良いとかそういうレベルではない。あきらが本当にベテラン刑事に見えてきた。



「それで進は、進の意思で、ひとりで大崎のところへ行った。断ったり他の女子に頼んだりも出来たのに。俺と一緒に行くことも出来たのに。ここは沙優ちゃんと同じだな、全く」



そして、有華は進を家に入れた。なんだかあきらの言葉には妙な説得力がある。



「ま、待てよ。俺ってことはないだろ。そもそも俺、大崎とは最近ちょっと喋り出したくらいだし…あ」



「そう、そこもあのふたりと同じ。可能性は十分だ。大崎は、進が―」



好き、かもしれない。



昨夜の出来事が進の頭の中で鮮明に甦ってくる。



進の両腕に偶然収まった、有華の小柄で華奢な身体の感触。そしてあの笑顔。