スマイリー

不良たちがバッティングセンターに戻って来る可能性は、決してゼロではない。



「じゃあ、解散しようか。荷物ありがとう」



進はもう一度ふたりに礼を言うと、荷物を担いだ。



「いえ、お礼を言うのはこっちの方です。おやすみなさい」



丁寧に頭を下げて、沙優が言った。淳也も軽く会釈をして、歩き出した彼女の後を追った。



その淳也の肩を、あきらが叩いた。



「ちょっと待った少年」



「小林です」



あきらの手を振り払って、淳也があきらと向き合った。



「そう噛み付くなよ、小林。君は彼女が好きだな」



とたんに淳也の顔が真っ赤になった。



と、沙優が、淳也が呼び止められていたことにようやく気付いた。



「どうしたの、小林くん?」



「あー、すぐ行かせるから入り口で待ってて」



ドア付近で立ち止まった沙優に向かって、あきらが弁解した。沙優はもう一度お辞儀をして、ドアの向こうに消えた。



「付き合ってるんじゃないの?ゲーセンに男女ふたりでは来ないだろう、普通」



進の問いかけで、淳也の顔はますます赤くなった。



「最初は友達と来てて、そいつは塾があるから先に帰ったんだけど、俺はしばらくひとりで遊んでたんです。そしたら岩瀬が定期入れ届けに来てくれて」



「なんか、ありそうであり得ない話だな。本当か?」


あきらが訝しげにたずねた。確かに、ゲームセンターに淳也がいたことを、沙優は知る由もないはず。



「ほ、本当ですよ。定期入れは学校の机に置きっぱなしにしてたんです。それを岩瀬が見付けたみたいで、そのとき教室にいた俺の友達に場所聞いて届けに来たって。自分で言ってました」



身振り手振りを交えた必死の弁明を、進は笑いをこらえて聞いていた。



「…本当ですって、ほら!」



淳也はポケットから携帯電話を取り出すと、受信メール画面を進たちの前に公開した。



“今ゲーセン?定期入れ持ってくからそこ動くなよ”



送信者は男子の名前だった。どうやら淳也の友達のようだ。



「…小林は、沙優ちゃんと仲良いのか?」



あきらがたずねた。



「いや、今日喋ったのが多分4回目か5回目か」



あきらはちょっと考えてから口を開いた。



「…そっか。いいぞ、もう行って。ありがとな」