スマイリー

「あ、その荷物」



少年が持っているカバンと大きめのぬいぐるみを見て、進は声をあげた。



「あの、さっきはありがとうございました。打ち終わってネットくぐったらあの人たちにぶつかっちゃったんです」



少年は、深々と頭を下げて、カバンとぬいぐるみを進に返した。



「これ、預かってました。なくなるといけないかな、って思って」



「ありがと。わざわざ俺らが戻って来るの、待っててくれたんだな」



荷物を受け取って、進も少年にお礼を言った。



「奴らは戻って来てないみたいだな。お、君は」



あきらが到着した。



「あ、さっきはありがとうございました」



少年はあきらにも頭を下げた。



「いやあ、俺は逃げる気だったから」



あきらは少年に歩み寄ると、その肩を叩いて笑った。



「やったのはこいつだよ。あんなバカな真似、俺にはできないからね」



「体が勝手に動いたんだ。正直、助けようとしたわけじゃないんだけど、なんか頭にきてさ」



恥ずかしくなってきて、進は少年から目をそらして頭を掻いた。



「あ、もうひとつの荷物は岩瀬が持ってます」



「岩瀬?だれ、それ」



あきらが尋ねた。確かに少年は進の荷物しか持っていなかった。



「俺と一緒にいた子です。多分ゲーセンの方にいると思うんですけど」



タイミングを見計らったかのように、ゲームセンターからつながっているドアを開けて、セーラー服を来た少女が入ってきた。