スマイリー

あきらはバッティングは下手だったが、UFOキャッチャーはうまかった。



「よし、いいぞ」



あきらのボタン操作に合わせて、アームが的確にお目当ての商品を挟み込む。あきらがやると、なぜかアームから商品が滑り落ちない。




あきらの取ったぬいぐるみは、大小合わせて10個以上にのぼった。



「相変わらずうまいな。どうやって持って帰るんだよ、こんなに」



進は1000円近くつぎ込んだが、結局小さなぬいぐるみがひとつ取れただけだった。



「いやあ、満足、満足!」


あきらは上機嫌でカバンから折り畳んだ布の袋を取り出して、中にぬいぐるみを詰めだした。



「…用意周到だな」



進も自分で取ったぬいぐるみを一匹カバンに入れた。


「なぁ、進。もう一回バッティングしようぜ」



ぬいぐるみを袋に詰め終わって、あきらが提案した。


「なんだよ、打ち足りなかったのか?」



「俺も80キロのボールをガンガン打ちたいんだよ」



「いいけど。俺は見てるからな」



「サンキュー」



あきらは自分で取った大きめのぬいぐるみをひとつ進に押し付けると、ゲームセンターとバッティングセンターを結ぶドアに向かって走り出した。



「なんだよ、これ。くれるのか?」



進はカバンに入りきらない大きさのぬいぐるみを抱えて、あきらの後を追って歩き出した。