スマイリー

緑色のネットで四角く覆われた空間に、ガシャッ、ガシャッという耳障りな機械音。



マシンからガシャッと打ち出される軟球を金属バットで打ち返す。



キィン、という心地よい金属音と衝撃が、バットを持つ進の両手を痺れさせる。



進たちの学校から20分ほどの所にゲームセンターがあるが、それに併設されているバッティングセンターにふたりは来ていた。



誘ったのはあきらだった。



「ああっ、また空振り」



あきらは一番速い球が打ち出されるバッターボックスに入って、時速130キロで飛んでくるボールを打ち返そうと悪戦苦闘している。



先ほどから、5、6球連続で空振りが続いている。



「そんな速い球打てるわけないだろう。野球部用だぞ、そのバッターボックスは」



進は隣のバッターボックスに立ち、時速80キロのボールをリズムよく次々と弾き返しながら笑った。






「くそう。30打数2安打」



バットをバッターボックスの脇に置いて、あきらが見物用のベンチまで戻ってきた。



進は一足先に打ち終わり、ベンチに座ってあきらを待っていた。



「2軍降格だな」



「お前はどうなんだよ、進」



「30打数18安打くらい。首位打者レベルだな、こりゃあ」



「言っとくけど、80キロしか出せないピッチャーなんて二軍にもいないぞ」



あきらが毒づいた。



他愛ないやりとりだったが、今の進にとってはこのやりとりがなんとも心地よかった。



あきらが、落ち込んでいる進を見て遊びに誘ったのは進にもすぐに分かった。



普段はさばさばした付き合いを好むような雰囲気を出しているが、あきらは人情家だ。



気を遣わせてしまったことに進は反省したが、同時にありがたくもあった。