スマイリー

「だから、大崎って誰よ」



「クラスメイトですよ。勉強教えてもらってて」



進は不意に、藍には藍の、有華には有華の良さがあると思った。



藍は綺麗だが、有華には藍にない魅力がある。そんな気がした。



そして、今こんなことを考えるのは不謹慎極まりない。そんな気もした。



「で、可愛いの?」



「まだ男か女かも言ってないですけど」



「絶対女よ。男だったら今の返事は『男ですけど』ってなるはずだし」



やられた。進は、できれば有華のことは隠しておきたかった。


有華には藍に、藍には有華に会ったことを、それぞれ知られたくなかった。それが人情というものだ。進は勝手に納得した。



「まぁ…女ですよ。そんなふうに引っかけられるとは思わなかった」



「論理派と言ってもらいましょうか。良いじゃない、隠そうとしなくたって」



「隠すつもりはなかったんですけど、なんとなく」



藍は考え込むように腕組みをした。進の顔を数秒おきに眺め、そのたびに口元を緩めた。