スマイリー

進は立ち上がって、ポケットから財布を出した。500円玉を1枚そこから取り出して、自販機に投入。



「ホットココアでいいよな」



「いいよ」



進はオレンジに光るボタンを押して、転がり出てきたココアの缶を有華に手渡した。



「ありがと」



有華は早速それを飲もうと、飲み口のタブを爪に引っかけているが、またもうまくいかないらしかった。何度も開けようとしてはカツン、カツン、と、タブがうまく上がってこない。



「貸して」



見かねた進は有華からココアの缶を取り上げ、プシュっと一発でそれを開けてやった。



「あたしこれ苦手なんだよね」



缶をにらみながら有華は不満げに呟いた。その姿が少しばかり可愛らしくて、進はクスリと笑ってしまった。



「笑ったでしょ」



「ごめんごめん」



文句を言う有華に、ふたを開けたココアの缶を渡してやる。それを一口、二口と飲み始める有華を見ていると、前回、前々回の有華にその姿が重なって、ちょっとした時間旅行をしているような気分になる。



センター試験の対策演習の結果がふるわず、落ち込んでいた自分。帝二大受験を薦められて悩む自分に、敬太と有華の関係に狼狽していた自分。