スマイリー

自販機の前で、ふたりは1メートルほどの間隔で対峙した。有華に触れられた背中と左胸が、異常なほどに火照っている。とくに左胸の内側、心臓は一生分の鼓動を今にも打ち終わりそうだ。



「じゃあ、大崎は2年の時から俺を知ってたわけ?」



落ち着きを取り戻そうと、とにかく頭を回転させた。言葉を口に出すことで、冷静になろうと努めた。



「まぁ、だいたいは藍先輩から色々聞いてたし」



そういえば、藍と有華は生徒会で接点があった。藍には弟のように可愛がってもらっていたし、藍が進の話を有華にすることもあったのだろう。



「ということは、あきらのことも?」



「あきらくんも生徒会だったからね。1年のときだけだけど、ちょっとしゃべったくらいかな」



「そうか」



幸いにも中身のこぼれなかったホットココアをぐいっと一気に飲み干して、空き缶をひょいっと5メートルほど離れた場所のゴミ箱に放り投げた。



空き缶はいつかのように、ゴミ箱の縁にはじかれることもなく、カランと乾いた音をさせてそのど真ん中に収まった。